食品開発男子のゆる〜いマナビブログ

30代食品開発系男子の学びと日常のゆる〜い雑記ブログ

選ばれたのは、イカでした。

私たちの身の回りには、様々な「材料」が存在しています。硬〜いコンクリートだったり、ビヨンビヨンなゴムだったり、お肌の保湿をする化粧水だったり。普段は全然意識していないのですが、実はコスパが良くて、機能性の高い物質が使われている「技術の結晶」だったりします!! そういう「ハイスペックな材料」というのは、「何かと何かの掛け合わせ」であることもけっこうあるんだそうで。

 

今回は、かなーりぶっ飛んだ「何かと何かの掛け合わせ」をした研究のご紹介。

 

選ばれたのは・・・

 

紹介する論文はこちら。

research-er.jp

 

北海道大学がNPG Asia Materialsという材料科学誌へ投稿した論文になります。タイトルは・・・「精緻な異方性と傑出した耐破壊性を有する、イカと合成高分子の複合によるダブルネットワークゲル」。う〜〜ん、変な文字が見える気がするのですが・・・笑。今回は、完全に内容のインパクト度合いで選んだ論文になります笑。

 

結論から言いますと・・・

 

イカとハイドロゲルを掛け合わせたら、良い材料ができました!!

 

って内容。ん?見間違いかな!?

 

イカ!? あの足が10本あるイカ!?

 

この子

 

そう、あのイカなんです。なんてことをしたんだ!!笑 完全に『鋼の錬金術師』のやっちゃいけない錬成じゃないですか!!

 

これはトラウマ・・・

https://altoria.jp/15332/

 

と冗談は置いておいて。インパクトが半端ない論文ですよね!? 冒頭でも触れましたが、材料科学の世界では、性質が異なる材料を掛け合わせることで、高性能な材料を作るというのは良くある手法だそうで。もう少し専門的に言うと、材料を壊れにくくする一般的な手法として、異なる性質を持つ複数の素材を組み合わせた「複合構造」や、材料構造に方向性を持たせる「異方性」の導入が知られています。

 

例えば、鉄筋コンクリート。あなたの家でも使われているかも。これは実は「異方性」と「複合構造」を掛け合わせた材料なんですって!特定の方向に配列した(つまり異方性のある)鉄筋をコンクリートと複合させることで耐破壊性を獲得したのが鉄筋コンクリートで、建築に広く使われているわけなんですね。そうだったんだ!!

 

で、なぜ今回「イカ」が贄として選ばれてしまったかと言いますと・・・。高分子ハイドロゲル(以下、単にゲルと呼びます)という物質があります。これは柔軟で水を含んだゼリーに似た材料でして、皮膚や筋肉などの生体軟組織とよく似た特徴を持っていて、生体代替材料・医療材料として期待されているんです。でも、一般的なゲルはゼリーや豆腐のように極めて壊れやすい材料なので、丈夫なゲルを合成するという課題があったわけなんですね。

ここで選べれたのが「イカ」というわけなんです!!!

 

イカを材料の視点から見てみると、柔らかく多くの水を含んだハイドロゲルと言えます。さらに、多くの生体軟組織は高次な生命活動を行うために異方性を持っています。例えば筋肉は、内部で筋線維が配列した異方的構造を持っているために、線維の配列方向に沿って伸縮することができるんです。そんな異方的柔軟材料であるイカの生体軟組織を合成ゲルと複合させることで、極めて丈夫な複合ゲルが得られると考えられたわけです。研究者の発想、イカの身体並みに柔軟!!

 

実際にイカの外套膜(水中で動くための筋肉)を使い、ハイドロゲル材料をイカに染み込ませて高分子ゲルを作ってみると、「めっちゃ丈夫やん!!」ってなったんですって。イカの筋繊維の「異方性」がゲルにきちんと組み込まれたんですね。

 

もうね、説明の図とは思えないインパクト。頭に入ってこないですよね笑

https://research-er.jp/articles/view/118363

将来、このイカハイドロゲルが手術とかで私たちの身体に使われることもあるかもしれませんね。そうなったら、笑ってしまったことに土下座をし、イカに感謝しなければならいなですね!!そんなクスッとする未来が来るのかも。

本日もお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

それでは、また。