食品開発男子のゆる〜いマナビブログ

30代食品開発系男子の学びと日常のゆる〜い雑記ブログ

青天の霹靂!! なぜ社長たちは突然逮捕されなければならなかったのか!?

ドラマでよく見かけるシーン。主人公が突然事件の犯人と疑われ、警察から逃げながら真犯人を見つける・・・的な。ある日、急に警察が家に来て、身に覚えのない罪で逮捕・起訴されて幸せな日常生活が失われてしまう・・・。恐ろしい限りです。

 

本日はそんな笑えない恐ろしいお話。

 

ある日突然・・・!?

本日の番組はこちら。

www.nhk.or.jp

記事も載せておきます。

www.asahi.com

 

 

どんな事件だったのよ??

これは、ある会社の幹部の方たちが、ある日突然逮捕・起訴をされてしまったという事件です・・・。きっかけは2022年に「経済安全保障推進法」が公布されたこと。この法律はざっくりいうと、高度な技術情報が海外へ流出することを防ぐ対策として「兵器になるような製造装置を海外に輸出したやつ、処す」みたいな法律のようです(正確ではなかったら、ごめんなさい・・・)。

 

2020年3月、機械製造会社「大川原化工機」が製造・販売する噴霧乾燥機が、「生物兵器を製造できる装置」であり、これを輸出したとして、大川原社長ら同社幹部3人が警視庁公安部に逮捕・起訴されるという事件が発生。経済産業相の許可を得ずに中国と韓国に装置を輸出した疑いとのこと。

 

噴霧乾燥機っていうのは、液体に熱風をかけることで、乾燥した粉末を作ることができる装置。え、これが兵器を製造できるって、どーゆーこと?? この装置、乳酸菌を生きたまま噴霧乾燥することができるとのことで、要は毒性のある菌やウイルスなどを粉末化した生物兵器への転用を危惧されたということなんです。「何が兵器にあたるのか?」というのが問われた事件ってことなんですね。

 

これが噴霧乾燥機。

https://www.oc-sd.co.jp/news/?url=info.html&ID=17

原理はこんな感じ。
水分を霧吹き状に噴霧して、熱風で乾燥させて粉末化させるってことです。

https://www.nc-ind.com/equipment/spraydrying/

 

この噴霧乾燥機って、やばい装置なの!?

この噴霧乾燥機、割と身近なものにも使用されている一般的な装置なんです。例えば、インスタントコーヒーやグラニュー糖などを作るのに使います。液体を熱風で乾燥して粉末にすることもできますし、粉末同士を水とかでくっつけて大きな粒にすることができるんです。この大きな「顆粒」を作ることを「造粒」と言います。こうすると、とっても水溶けが良くなるんです。インスタントコーヒーをお湯や水に溶くのって、細かい粒よりも簡単じゃないですか?あれも噴霧乾燥機を使用した造粒の技術なわけなんです!

 

左:ミルで挽いたコーヒー 右:造粒した顆粒状のインスタントコーヒー

http://cafe-kissaten.com/wp-content/uploads/2018/08/regular_coffee-instant_coffee.jpg

うーん。そんなに兵器になるほどの危険さは感じないのですが・・・。まあ、ペンや包丁だって武器にもなるわけですし、何事も使い用ってことなんでしょうか・・・?

 

 

どこらへんが兵器ってことだったのよ?

会社側はこの逮捕を不服とし、争うわけことになります。争点は、警察が主張する「熱風のみで菌が殺せる」という点。この「菌が殺せるかどうかが軍事利用できるかどうか」の判断材料になるということで、この点を両者が争ったわけなんです。

 

どういうことかと言いますと、「菌を殺せるのであれば、死んだ菌から毒性物質のみを取り出せばいいだけ」なので、「作業者が危険にさらされることなく、生物兵器を作れるじゃん?」という理屈。毒性のある菌の汚染を気にしなくていいってことですね。逆に菌を熱風で殺せないとなると、「菌の汚染を防ぐためにさらに高度な設備が必要となるため、実質この装置のみでは生物兵器を作ることは不可能」っていう論拠。

 

警察側・企業側両者が装置各部位の菌の生存を検証したデータを提出します。番組を見た限りですと、警察のデータは都合の良いものが提出されている可能性があったようで、企業側のデータの方が信憑性が高そう・・・。警察側のデータは、熱風温度が高いそうな部位でしか、菌の生存を確認していないんですね。一方で、企業側は温度が上がらない部位での菌の生存をきちんと示している。警察側の強引な印象が拭えないデータと感じてしまいました。

 

で、どうなったのさ?

これが決め手となったのかはわからないのですが、最終的に警察側は社長たちの起訴を取り下げ、社長たちは釈放されることになったのです・・・。「警視庁と東京地検が起訴後に改めて調べた結果、同社製品は輸出許可の必要がない可能性が浮上したためとしている」という理由だそう。

 

食品などに使用する装置を製造・販売していたら、突然逮捕されてしまったという事件!! いやー、本当に怖い話です!! 4ヶ月の間、社長たち幹部は被告人として自由な生活を奪われ、留置されていたわけです。番組のバイアスがかかっているのかもしれませんが、警察側は逮捕ありきで考えている印象が拭えず、立件するための根拠はかなり苦しいものがあったように感じます。これは、本当に納得がいかなかったと思います。実際、社長たちは「捜査の違法性を明らかにするため、国と東京都に約5億7千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした」となっています。

 

なんとも、心が痛む事件でした。海外に技術が流れ、他国で兵器が作られるのは当然防がれるべきで、法律の目的とするところには大賛成です。ただ今回の件は、「手段が目的になってはいけないんだよね!!」という典型的な例のように感じます。人の人生がかかっているという点で、分別と良識と謙虚さがもっとあるといいのになーと感じてしまった次第です。忘れがちですが、謙虚さ大事。自戒を込めて。

 

本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。

それでは、また。